不定期戯言2

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2007/01/22(Mon)

著作権延長論に物申す

IRCで紹介された 「著作権延長論に物申す」 を読んだ。この文章の著者である 山形浩生氏 は,著作権の保護期間を70年に延長する動きに反対している。前半では松本零士氏の

そばやうどんと一緒にしてもらっては困る。作家の作品は残るが,そばやうどんは私にも作れる という発言に絡めて,そもそも著作物が手厚い保護を受けることに正当な理由があるのかといったことにも言及しているが,これは松本氏の売り言葉に対する買い言葉に過ぎないと思う。それより重要なのは,2003年に映画の著作権の保護期間が延長された直後に書かれた 「著作権の『危機』って何だ」 でも主張しているように,保護期間を長く設定することによって多くの作品が 死蔵 されてしまう危険性だろう。「〜物申す」は

著者の死後50年も残る作品は例外的なもの。それらのためにすべての著作物の保護期間を延長してしまうと,他の多くの著作物の利用に枷をはめることになる。例外的なものは例外的に守ればいい。

というような話でしめくくっている。この考えにはまったく同感だ。ミッキーマウスを保護したければ保護期間をどんどん延長するのでなく,ミッキーマウス保護法を作るなり,希望する著作権者には一定の料金と引き換えに権利を存続させるなりすればいい。知財立国の看板を掲げるつもりなら,過剰な保護でコモンズを減らしてしまうことのデメリットも計算に入れて欲しい。新しく産み出されるものがない先細りの社会には未来がないのだから。

「例外」の人の声がやたらと大きいってことが,議論を平行線にしてるんじゃないのかなあ。

それにしても70年は長すぎるだろう。たしかに作品が作者より長生きすることもあるかもしれないが,それをいうなら発明だって長く残るものはあるし直接的に人の暮らしを守ることだってあるのに,出願からたったの20年しか保護されない(しかも権利を維持するには費用がかかる)こととのバランスはおかしくないのか。

ちょうど今は著作権を授業で扱っているところなのだが,自分をニュートラルな立場において話すのは難しい。