SSS2007を終えての雑感
私の発表内容は,数学の教科書には掲載されているものの 入試で出題されないことからほとんど扱われない統計分野を, 情報のシミュレーションから派生して扱ってみるというものだった。 後で何人かの方からコメントをいただいたのだが, 多くの学生や研究者(調査研究では必須のはず)に必要な統計を教える機会 がないことに不満を持っている方は多い様子。 さらに,モデル化とシミュレーションをどうしてペアにしなくちゃいかんのだとか, よいモデル化の話が普通教科「情報」の教科書にはない (実教の専門教科の教科書はいいと思う)とか, コンピュータシミュレーションの前に現実のサイコロを試す意味とか, いろいろな示唆をいただいた。
ところで,こういう話もあった(いろんな人と話したので, 自分の意見と人の意見が混じっている):
たとえば数学では高校卒業時にどのような知識を持っているべきであるかということについて, わりと明確なイメージ(微積がどの範囲までできて…)が共通認識になっており, それは基本的に何十年も変化していない。他教科でも状況は同じであろう。
しかし,社会の変化に応じて必要な能力は変化する。 なのにその差異を従来教科はカバーしようとしない。 そこで仕方なく,情報や総合などの新設教科が歪な形でフォローしているのが現状だ。 三重大の村松先生が,小学校の総合学習で知財学習を行なうことについて発表された。 その内容やねらいについては強く共感するのだが, これも「歪なフォロー」の一つだし,私の発表内容ももちろんそうだ。 いずれも社会で必要とされている知識・能力であり, 自然に考えれば社会科や数学科で扱うべき内容であるにも関わらず, 指導要領が変わらない以上誰も手をださない(だせない)から, 仕方なく内容のしばりのゆるい総合や情報で無理矢理扱っているのだと。
「高校卒業時の生徒のイメージ」だけ考えていてもだめで, 最初に「期待される大人のイメージ」があって, その実現のためにどういう高校生を育てるか,というのが話の順番だと思うのだが。