不定期戯言2

戻る

検索条件:2010年8月19日 

2010/08/19(Thu)

SSS2010

ということで昨日から群馬県へ。温泉地ということで,いろいろ懐かしいものを目にする。 予稿集の執筆者名を全部書くと大変なので,発表者の名前だけ。

会場 遊戯室 懐かしい看板 射的とか 石段の多いところだった 丸いポスト

「情報Bにおけるプログラミング実践の報告」保福やよい氏(神奈川県立相模向陽館高校)\ CSアンプラグド第12章 「プログラミング言語」 による導入で,紛れのない表現は意識しないとできないことに気づかせる。 それを踏まえた上でドリトルによるプログラミング体験から自由課題・発表・相互評価を行なったとの報告。 自由課題ではアニメーションがほとんどであったが,ゲームもいくつかあったとのこと。

「アンプラグドを活用した公開鍵暗号学習プログラムの情報科教育への適用」間辺広樹氏(秦野総合高校) 公開鍵暗号の概念を説明するために,CSアンプラグド第14章 「ツーリストタウン」 で最小支配集合問題を説明し,第18章 「キッドクリプト」 でそれを用いた公開鍵通信を体験させた。 授業ではFlashを使って説明したようだが,彼のサイト「海の近くの情報教室」では公開されていない様子。

「セキュリティの指導を視野に入れた『ネットワークのしくみとプロトコル』における体験的な学習について」小原格氏(東京都立町田高校)\ いわゆる「紙パケット」による実習。ブロードキャスト,ルーティング,TCPについて原理的なところを体験させようというもの。

「ボール式マウスを用いた自律型ロボット用位置センサの開発の試み」高山大輝氏(静岡大学)\ ロボットが現在位置を取得するための道具として,ボール式のマウスを使おうというもの。 「ソースは公開しないの?」「考えながら書いててぐちゃぐちゃだから」というやり取りがあったのだけど, それくらいのことであれば隠すことはないと思う。

こんな感じ 下から見たところ

「タイルスクリプティング環境を利用したアルゴリズム学習の実践報告」五十嵐誠氏(神奈川県立横浜清陵総合高校),谷川佳隆氏(千葉県立船橋豊富高校)\ Squeak eToys,Scratch,アルゴロジックなどをプログラミング学習の導入に用いた実践の報告。 アルゴロジックはSSS会場でもずいぶん流行ってしまって, 休憩時間が終わって席に戻ろうとするとあちこちのノートPCでやってるやってる… おかげで最短手順の新記録まで出てしまう始末…。 Squeak やScratchはブロックの組み合わせでプログラミングするので,文法エラーが決して起こらない。 この点については賛否両論あるが,私はこのような環境「も」必要だと考える。 できればフローチャート形式で同じようなものを作ってPENと連動させたいのではあるが。

「小中高校の情報モラル教育はどのような問題・状況に対処しなければならないか」阿部圭一氏(愛知工業大学)\ 話された内容をここに要約することは難しい。 たとえば著作権については社会全体で意識が希薄であり, 動画サイトに違法アップロードされた動画を見ることに罪悪感を持てといっても難しい状況である (実際,作者へのファンレターにそのような形で動画を見たことを書いてしまうという もある)。このことをたとえば「情報」の授業だけで言ってもしょうがない… たとえば他教科の授業で「こないだのNスペはいい内容だったからYoutubeで探して見とけ」 という話がなされないとも限らないわけで。 携帯電話については,持ってくるなといいつつ部活顧問やクラス担任が生徒の電話番号を 集めているのが現状。このホンネとタテマエの乖離が気持ち悪い。

「文系大学における一般情報教育」立田ルミ氏(獨協大学)\ 参加者は発表中もMoodleで意見交換していたのだけど,そこでいわゆる「Excel方眼紙」の話題もあった。 紙をPCの画面に置き換えるだけでは誰も幸せにならないのにね。でもそういう感覚の人が多いのは事実。 それがなくならないことと「でもしかSE」とはつながりがあるように思われる。

「Rを使った情報教育」奥村晴彦氏(三重大学)\ R はもちろん統計解析環境ではあるのだけど,プログラミング教育にも有効ではないかという話。 そこで気になったのが,Rのベクトル計算の自由さ。ベクトル同士の加減や定数倍はともかく, スカラーの加減やベクトル同士の乗除,あるいは2乗や関数をベクトルに作用させるということは, 初学者にとって本当にわかりやすいことなのかということ。 慣れた者は自然と実装をイメージするのだけど,それができないことがわかりやすさにつながるのか, わかりにくさにつながるのかが,我々には既にわからなくなっている。

「青少年とインターネット問題の社会的構築」伊藤賢一氏(群馬大学)\ 参加者同士の情報交換に興味深い話があった。 たとえば性的被害とかの中心が出会い系から非出会い系に移って久しいのだけど, EMAがいかに無意味であるかとか (非出会い系で2009年に被害にあった児童の44%がEMA認定「健全」サイトだったという ニュース がちょうど配信された。 EMAは「サイトでなく利用者が悪い」とコメントしているが, だったらなぜそれを「健全」と認定したままにしておくのか), 需要と供給が成り立ってる以上いたちごっこにしかならんわなとか, ちょっと言えない話とか。

研究内容はともかく,いまどきの大学生はこういう心配もしてあげないといけない時代なのだなぁと。

2日目の最後は,神沼先生が論文を書く上で気をつけるべき事柄についてレクチャしてくださった。 私は論文を書くような研究なんてしていないのだけれど, 「ああ,論文というのはそういうものなんだ」と考えを一新した。 「論じることと説明することは違う」というのは,確かに私自身ハマってしまいそうな点だ。