午前中に立川まで足をのばして統計数理研究所へ。「大学間連携・統計教育方法論合同ワークショップ」ということなのだけど,私が興味あったのは今年の入試での統計の取り扱われ方。まず「ある私立大学における平成27年度入試問題『統計』の分析と課題」(広島工業大学景山氏)。今回の入試では統計が出題されるものなのかということについて賛否両方の情報が飛び交っていたわけだが,「出題されるものである」というメッセージをこめて選択問題に含めたという。選択者の割合とともにコメントがあったが,受験者側が付け焼刃であった感が否めない。たとえば2群の平均,分散が与えられて,それを合わせた集団の平均,分散を問う問題では,分散まで正解した者は皆無であったという。付け焼刃では概念やイメージが作られないので,具体的な数値に太刀打ちできない。これがおそらく文字式で∑の計算問題になっていたら正解者は増えていたのだろうという気がする。
つづいて「大学入試における統計分野の出題と得点分析とこれからの入試」(高校数学新課程を考える会大淵氏)。センター試験IAでしっかり出題されたわけだが,相関係数の正解率が案外悪い。必要のない数値がたくさん与えられていたことで,どうしていいかわからなくなったのだろうと私は推測している。IIBの統計は選択者が少なかったので何とも言いがたい。個別入試では今年は「旧課程措置」やら「共通範囲」やらということで統計が出題されないケースも多く,出題されるところでも選択問題が多かった。しかし数学で直接出題されなくても,小論文などでちゃっかり統計を使うところがあったりもして…。これは大学側からの「統計は必要である」というメッセージなのだと思う。短期間での付け焼刃でやっても意味がない,統計を使って「考える」力を問いたいということだろう。
会場で会った辰己氏から高大接続システム改革会議を傍聴した話を伺う。小中の教育が変わり,大学教育も変わる中で高校だけが変わらないのは現行の入試システムが変わらないから。だったらそれを含めた高大接続「システム」を変えてしまえばいいだろう,というような話などがあったらしい。かなり強力なメンバでの会議であるらしく,今後の動向が気になる。自分たちがどう変わっていけば,「解く力」重視から「考える力」重視へのシフトができるだろう。
午後は日本情報科教育学会の研究会。まず坂村健氏の講演「イノベーションを起こすための情報教育」。コンピュータ教育をCS,IT,DLの3分野で考えると,日本はCSをやらなさすぎだという話から始まる。イスラエルにしても英国にしてもCS教育が必要だという話になってからの具体的な動きが速い(この点については大陸法の国は不利だとも)。イノベーションに必要なのはチャレンジが多く行なわれることであり,プログラミング能力があればチャレンジの機会は増える。そのとき必要なのはプログラミングできる「その分野」の専門家であって,プログラミングの専門家ではない(オランダのスマートアグリ然り)。
研究発表は9件あったのだけど,2会場に分散したので聞けたのは5件。中でも山下裕司氏(山口県岩国高校)の「プログラミング教育への舵取り」には多くの示唆があった。
- グラフィックは受けがいい
- 1行ずつトレースできる環境はわかりやすい
- プログラムの説明をさせると理解度が明確にわかる(テスト問題とか)
あたりのことは取り入れてみたいな。
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