風に舞い上がる理系バカ
書店の店頭で『風に舞い上がるビニールシート』(森絵都著,文春文庫)が目についたので読んでみた。短編6作,最後にニヤリとさせられることを楽しんだ。まったくの悪人がいないことにほっとさせられる。描かれているのはたいてい不器用な人たちだ。
最後の表題作,簡単に吹き飛んでしまう「ビニールシート」から解放されなかったエド,そのエドが吹き飛んでいくことに我慢できなかった里佳,そしてラストシーンで使われた「ビニールシート」…ここでほろっとしてしまう私はいろんな意味で日本人なのだろうと思う。
『理系バカと文系バカ』(竹内薫著,PHP新書)は読んだまま放置してあった。理系と文系の間のへんな壁…それを作ろうとする根拠は明治の頃と今とでは違うのだけど,そんなのつまんないよなと思えるようになる機会がないまま大人になるのは寂しいな。本書では理系のバカ,文系のバカについて述べられてはいるけど,もっと基本的なところで「分類するバカ」があるんだろうと思う。
図書館の閉館時刻が迫っている中で大急ぎで読んだ『多読術』(松岡正剛著,ちくまプリマー新書)を改めて買った。私が身につけてきたいろいろな方法が肯定されていることにほっとしたりもする。たとえば二度読み,たとえば目次読み,例えば著者との会話…聞き役の方が「読書がコラボレーションであるというのは新しい見方だ」とコメントしていたが,松岡氏は当たり前だというし,私も常々そう考えている。音楽なら「この曲を聴くとあの喫茶店の情景が…」なんていう人はごまんといる。だったら読書だって同じように肌感覚まで含めた何やかやが読書体験として残っていいのだと思う。
せっかく買ったんだからじっくり読み直そう。
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