前に書きかけた分の続き。
分科会はあちこちをはしご。最初は第1分科会(新学習指導要領にむけて)で「オープンソースを活用したネットコミュニティの授業について」(都立上野高校,能城茂雄氏)。新指導要領ではSNSなども視野に入っているのだけど,外部のサービスを利用するのはいろいろ問題がある。だったらポケットマネーや消耗品で買えるパソコンにDebianとか入れて,OpenPNEとかで生徒にいろいろやらせてみればいいじゃん,という話。時間があまったので最後にインストールのデモまでやったりして。Lennyにインストールする方法を彼がまとめたものがあるが,squeezeでもそんなに変わらないだろう。
「情報Aから情報の科学へ」(都立町田高校,小原格氏)。特にモデル化とシミュレーションについて。実教から出ている専門教科の教科書が役に立つとのこと。状態遷移図やPERT図もうまくやれば教えられるんだな,これらはコンピュータに関係なく持っていてほしい知識ではあるからなんとかしたいな。数式モデルについては,数学ではやはり手計算でやれることしかやらないだろうから,コンピュータ使って楽に計算することで,これも思考の一方法だと取り入れてほしい。そのためにはそんな複雑なモデルを考える必要はないんだよな,ということを実感した。そういえば状態遷移図は兼宗先生の講演にも出てきていたな。
第3分科会(情報の科学)にうつって「Script型言語を用いた情報の科学的理解」(石川県立金沢二水高校,鹿野利春氏)。HSPを使った実践。やっぱりイベントドリブンだと作ってる方も楽しいよな,うん。また,生徒に無理をさせないことも大事ではあるけど,教える教師の側も無理をして背伸びしすぎちゃだめだということを強調していた。本格的な言語だと習得も準備も大変なんだから,Scriptでやれるやつでいい,いまどきのパソコンはじゅうぶん速いんだから,と。
次の「暗号化鍵を指導する工夫」(山口県立岩国高校,山下裕司氏)も気になるのだけど,冊子でおよその概要はわかるので第4分科会(授業評価と育成)に移動して「教科『情報』で生徒たちに具体的にどのような力を身に付けさせたいか」(近江兄弟社高校,長谷川友彦氏)。まず,「操作は教えない」ということを強調した。これは2年前のブログへのtss氏のコメント
あと、どうしても操作の教育やるなら、絶対操作を教えちゃだめだと思ってます。操作は発見させなきゃいけませんね。
と同じ話。自分のやりたい操作がどういうことなのか噛み砕いた上で画面をよく見ればわかるはずだということ。また情報は「報せる力」だけでなく「報せられる力」もある,漠然と見ているだけでは正しい読取りができないことにも触れた。たとえばExcelのデフォルトのままグラフを作ってしまうとどんなことになるか,グラフができたところで安心してしまうのでなく,それがどのように読まれるかを意識することで正しい表現を選択させようということだ(このあたりは統計リテラシにも通じるか)。これは先に述べた「GUIは見ればわかる」の一歩先の話だ。見たままボタンを押せば一応の結果は出るけど,それが本当に自分の意図したものであるかを吟味し,必要ならば直さなくてはいけない。
「教科情報におけるe-Learning学習の効果と学力向上の可能性の検証」(兵庫県立西宮今津高校,佐藤万寿美氏)。Moodleをまっとうに使った実践。小テストとかもきちんとやったとのこと。クラス成績で1クラスだけやたらと点数の高いクラスがあったが,そこは満点3回以上で次の問題に進むルールを設定したため,反復回数がすごく多いということ。生徒にはおおむね好評なようだが,「疲れる」という意見もあったらしい。正解に至るまで反復できるのはいいが,それはそれで疲れるのだとか。
最後は第2分科会(社会と情報)に移動して「統計リテラシーを育成するアンケート調査実習の実践と課題」(名渓学園中学・高校,大貫和則氏)。アンケートの数字をなんとなく眺めてなんとなく傾向を見て終わるのでなく,検定まできちんとやろうというもの。もちろんその前の準備段階も企画書作りから始まってずいぶん時間をとっている。おもしろいと思ったのは,必ず2×2のクロス集計ができる形での仮説を作らせて作業していることだ。そうすることで統計的な処理の方法をまとめて教えることもできるし,他の班の結果を理解しやすくもなる。検定にはJavascript-STARを使用しているとのことだ。この方向で数学科と連携できれば,実り多い授業ができそうだ。
閉会式で,参加者がちょうど256人だったとの発表があって,会場が沸く。次回は東京情報大学(千葉県)か。そのとき,愛知県の研究会はどうなっているだろう。
ポスターセッションのことを書き忘れた。天白高校近藤氏の「楽しみながら学ぶ音のディジタル化」にあった,音をA/D変換して生数値を見せるというのはおもしろい。これをD/Aすることで誤差の話もできるだろう。
茨木高校八幡氏の「Webアクセシビリティ」で扱われた色覚の話は私も授業で知識としては話すが,実感させる方法がほしいなあ。
中央大杉並高校生田氏の「社会と情報に向けて今から準備すべき事」は著作権などについてより深い示唆を与えてくれた。
大阪学院大高校松本氏らの「論理パズルを利用した情報・総合の授業の展開について」はBITS PUZZLEを用いたもの。論理は本来なら数学で教育されるものだが,実は数学ではろくに論理を身に付けさせてはいない。単にストックフレーズに状況をあてはめさせることを繰り返しているだけだ。そう考えると,論理が本当にわかるのはアルゴロジックやこのパズル,詰碁や詰将棋のようなゲームでしかできないのではなかろうか。
だきわ wrote at 2011-12-26 08:26:
コメントの受付は終了しました。